大使のおしゃべり談話室 第5回


2002年 5月 24日


  日本もそろそろ蒸し暑くなる季節でしょうか。 カンボディアは例年より早く雨季がやってきたようで、時々雨が降るようになりました。

  この国の平和と安定が確かなものになって、都市部における発展の始まりなど、ここに住んでいるものの眼にも変化が感じられます。 観光客も増えてきています。 皆様の中にもひょっとするとカンボディアに来られる人がいるかもしれません。 そこで今回の話題を次のように設定しました。

プノンペンの河べりをご案内しましょう
  私は時々プノンペン市内のサップ河沿いをジョギングしています。 昨年12月のアンコールワット国際ハーフマラソンに備えていた頃はかなり頻繁に走りましたが、最近は少しサボり気味で頻度が落ちました。 でも走っていると街の様子が良くわかりとても面白いので続けています。 今日はこのホームページ上で私が皆様のバーチュアル・ガイド(仮想案内人)をつとめて聊か押し売り的な案内をさせていただきます。 一度是非プノンペンに来て私の案内のインチキ度(?)を確かめてみてください。

  先ず、手書きで恐縮ですがプノンペンの概略図 を御覧ください。

「プノンペン概略図」


  この地区は丁度ラオス方面から 流れてくるメコン河とトンレサップ湖に繋がるサ ップ河が交差する場所からほんの少し北、即ちト ンレサップ湖方向に向かった河沿いの地帯なので す。 北に向かって、フンセン公園、カンボジアー ナ・ホテル、王宮前広場を通ってメコン河やサッ プ河を走るスピードボートの船着場まで遊歩道が 続きます。

  カンボディアにはあまり四季はありませんが、雨季と乾季ははっきりしています。面白いのは、乾季にはトンレサップ湖から南東方向に向かって いた水の流れは6月から始まる雨季になるとメコン河の水量が顕著に増えるためこの二つの河の交差するところからサップ側の流れが逆流を始めるのです。 御承知のとおりメコン河は遠く中国からミャンマー、タイ、ラオスを通ってくるので水かさは、雨季の終わりの11月ごろには乾季の最低の水位と比べてプノンペン市内でも10メートルぐらいになるときがあります。 昨年と一昨年はカンボディアでも大洪水があったので、走りながら見ていると日に日に水嵩があがって王宮前広場でももう地表すれすれになり、ずいぶん心配しました。 最近までは乾季の終わりで水は遊歩道からはるか下に下がっていましたが、いま少し雨季に入り、暫くすると少しずつ水位も上がってくるでしょう

  いつもはジッギングの出発点は独立記念塔ですが、そこから東に走って川面に出ると、そこもいろいろ面白いのです。 結構たくさんの小船が入って来ていますが、河で魚をとって暮らす家族が集まっています。 舟の中で生活をしているような家族も少なくありません。 ちょっと南の方には川沿いに多くの不法居住者らしき人々が部落のように集まって生活を始めています。 地方には職がないのでいきおい首都に人々が来て住み着いてしまう現象が顕著なのです。 プノンペン市長は精力的に市内の開発を進めていますが、こうした市外から入り込んでくる人々を開発対象地域から移転してもらって、移転先に土地と生活を営む手段を提供しなければならず大変ですが、そういう作業に最近は日本からのライオンズクラブとか地方自治体の人々とか、いろいろな団体やNGOが様々な形で市長の努力を支援し協力してくれるようにもなっています。 走った後にこうした人々の生活ぶりをそっと見てまわったりすると市長が住民に話し掛けているような光景にも出くわすことがあります。

  この付近は最近急速に整備され、あっという間に「フンセン公園」という名前の公園が出来上がりました。 何日おきかに走って見ていると、どんどん景色が変わってきて、その工事の早さには驚かされます。 さらに感心させられたのは、公園にトイレやごみ箱まで備え付けられたのです。 日本では当たり前ですが貧しいこの国では公園のような広場にそんな設備もまだ殆どないのです。 チア・ソパラ市長の立派な意識や困難な財政事情の中でこんなに速いスピードで街をきれいにしていく力にはいつも敬服しています。 チア・ソパラ市長は、サップ河を隔てた向こう岸のチョルイチョンヴァ地区をもこれまた猛烈なスピードで開発をしています。 昨年来見る見るうちに護岸工事や整地が進み、ひと月ほど前にはそこでプノンペン市や村落で作られた農産品や軽工業品の物産即売フェアが開かれました。 偉いものですこの市長は。 因みに、この間外務省はこの市長を10日ほど日本に招待しました。 「日本でどういうものが見たいですか」と私が聞くと、直ちに水の処理施設、堵殺場や肉処理施設、ごみ処理のシステム等プノンペン市に役に立つことは何でも勉強したいとの姿勢です。

  話をフンセン公園に戻します。 この公園はいま櫓を組んだりステージが出来上がり明日25日の、日本人とカンボディア人の盆踊り大会の会場となります。 今日は会場前に大きな日章旗とカンボディア国旗が何本もへんぽんと翻っていました。 明日は夕方前から日本の大分県や広島県などからきた人々から日本の祭り芸能を紹介してもらうと同時に、カンボジア人と日本人とで一緒に盆踊りや音楽を楽しむのです。 そのため当地の在留邦人の有志が集まって実行委員会を作り準備に当たってきました。 先日来週末に大使館の多目的ホールを利用して練習会を行いましたが、大人や子供が会場を埋め尽くして練習しました。 カンボジア人も祭りや踊りが大好きで盛り上がるのは確実です。

  さて、道草を止めてジョッギングを続けましょう。 ホテル・カンボディアーナの前からチャトモク劇場前を通り過ぎると王宮前広場に来ます。 東側はサップ河、西側には美しい王宮が見えます。 朝早いのに、もう人がかなり出てきています。 お坊さんやおじさんおばさん、若い人々が行き交いますが、遊歩道で、摘んできたばかりのきれいな蓮の花の蕾の花弁を丁寧に一枚一枚折って、お供えや装飾用の花として売っている人もいます。 20人以上の集団がいつも同じ場所で、何か中国系の朝の体操をやっている光景も見られます。雀のような鳥を鳥篭に入れて売っている人もいますが、それを買う人は食べるのではなくて逃がしてやって何か願い事かお祈りをするんだそうです。国王や王妃もこの仏教の習慣である鳥を放すことをしているそうです。

  王宮前広場を過ぎて素手で顔の汗を拭きながらさらに走ると、群がっていた鳩が飛び立ちます。川岸の石の土手には昨日から続けて寝ているのかもしれない人がまだ横になっている姿もたまに見かけます。 ちょっと先に行くと、古くて小さな舟が何メートルか下の土手に着いて、貧しそうだが日焼けした小柄なおじさんとおばさんが二人で何か荷揚げしようとしています。 うん、魚だな、と思って走るのをやめて見ていると壊れかけた登ってきた竹篭の中には魚が沢山いて、そのおばさんは籠を頭の上の載せてから、近くの市場の方に向かって売りに出かけたようです。 冷蔵庫も氷もない小舟でその日ごとに魚をとって生業を稼いでいるのです。 この川岸には所々に大小の舟が客を待っています。 10人ぐらい楽に乗れる舟なら1時間10ドルぐらいでサップ河でもメコン河でもレンタルして遊覧してくれます。 結構楽しいですよ。

  右にサップ河を眺めながら王宮広場を過ぎると間もなく左側にいろいろな店が並んだ通りが始まります。各種販売店も面白いが、この通りには何軒かのそれなりに趣のあるレストランがあり、外国人の客も結構多く来ます。カンボディア料理やインドネシア料理、洋風のレストランなどがありますが、2階のテラスから河を眺めながら食事をするのも一興です。 ここに掲げたのは、この辺の景色をスケッチした駄作です。


 



  時たま知っている人にも出会います。日課として毎日散歩をしているという有名な老建築家ヴァン・モリヴァン氏、援助機関である世界銀行の事務所長であるアフリカ出身のボナヴェンチャー氏など。以前には見られなかったカンボディア人のジョッガー(ジョッギングをする人)も少しずつ増えています。

  走っていると(歩いても同じですが)、人々の表情、暑さや生活の臭いなど街の息吹を身体ごと吸収できます。思いがけなく面白い店などを発見することも出来ます。 あまり規則的ではなくても継続的に走ることによって、定点観測ならぬ定域観測が出来、プノンペンの発展振りやそのテンポを感じ取ることになり、興味深々です。 なんと言ってもカンボディアは今は都市部では発展の時期に入ったのではないかなと思わせるものがあります。 小泉首相が来年は日本とASEAN諸国の交流年にしようと呼びかけています。 皆様も是非内戦後の復興に励むカンボディアを見にきてください。




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